寄付研究や慈善活動について研究するために色々な書籍や論文を読んだメモ書き
最近、寄付研究とかファンドレイジングというような分野があるので知って、それを調べるのに色々な書籍や論文を読んでいたのでメモ書き。
色々な書籍を通して寄付と慈善活動(Philanthropy)においては、次のコンテキストが出てくることが多い。
- CharityとPhilanthropyを区別している
- チャリティ(Charity) = 問題を軽減する = 魚を与える
- 慈善活動(Philanthropy) = 問題を解決する = 魚の釣り方を教える
- 慈善事業とベンチャー
- アメリカでは特に慈善事業においてベンチャー精神の話がでてくる
- この2つは近い部分があると感じた
- 1981年にBill Draytonが起業家の概念を導入して、社会問題に取り組むために次のような概念を慈善活動に導入した
- 今まで組織ばかりにフォーカスしていたのを、リーダーシップや才能にも視点をあてた
- 非営利団体においても、健全な管理、透明性のある会計、戦略など基本的なビジネスの信条に従うべき
- “神聖なものとして扱われていた利益”や”非営利”の境界を曖昧にしていっている
- これは、慈善団体にも健全な管理や透明性が必要だけどそうなっていなくて、実際それができているのはどっちかという企業だった
- なので、企業でやっていることを非営利団体にも持ってきてやるという社会起業家という概念の話が近い
- 税制
- 寄付における税制の仕組み
- 国ごとに結構違う
- アメリカは法律レベルで慈善活動の分類がされている
- 1900年代のロックフェラー財団と法律の改善とかも
- 諸外国における寄附の状況と税制の役割
- 信用と信頼と積み重ね
- CO(コミュニティ・オーガナイジング)ではストレッチゴールの話
- 信頼の欠如(Trust Deficit)の歴史の話
- 信用は積み重ねが必要になるという話が色々な形ででてきた
- 市民
- 市民として義務的な市民活動についての考え方が国によって結構違いがあると思った
- これは歴史的な背景とかの積み重ねがありそうだった
ここからは読んだもののメモ書き。 自分の解釈での📝なので間違っていること、読み違えているものが多いと思います。
寄付の魅力|渡邉文隆 | ファンドレイザー|note
「寄付」について色々書かれている。 寄付におけるブランド、マーケティング、寄付の特定、寄付者と組織における関係、ファンドレイザーについて。
寄付研究という分野があるのを知ってこの辺で興味をもって最初に読んだ記事。
ふるさと納税制度の利用者の属性と要因分析
ふるさと納税を対象にした寄付理由について調べたジャーナル
ResearchFund3.0 - 研究費のイマを言語化し、ミライを予想する - Key Session - YouTube
寄付の形の変化、クラウドファンディング、フレンドファンディングと複数回の寄付、研究機関における寄付について。 また、大学の研究機関を外部化と公益法人とする理由、不適切寄付を受け入れたときの問題(MIT)についてなどが面白い。
- 国立大学は雇用の制限や収益性を出しては行けないといった制限がある
- 公益法人は雇用は、一部収益を出すことができる
- 国立大学 <-> 公益法人 <-> 株式会社のような中間的な関係
学術系のクラウドファンディングの状況について良くまとまっている。
フレンドファンディングの話がよかった。
クラウドファンディングをするために、Twitterの準備をしたりとかページを作るではなく、 日頃の発信をし続けていて、その文脈の中でクラウドファンディングをチャンレンジしていく、 そういった形にかわっていかないとフレンドファンディングの問題は解決できない https://youtu.be/EbcTYv2ws1U?t=2055
寄付をしてみよう、と思ったら読む本 (日本経済新聞出版) | 渋澤健, 鵜尾雅隆
寄付
- 寄付は共感
寄付と助成金
- 助成金は期間が限定して使い切らないといけないので(フロー型なので)、ストックにならない
- 寄付金は、助成金に比べて自由度があってストックできる
- これは学術機関における公益法人と似た話
NPO
寄付のお金を人件費に使って良いのかという話が面白い。 NPOも単にもらったお金を横に流してるわけじゃないので、優秀な人によって寄付で得たお金が別の価値が変化することがある。 NPO自体がお金を使ったより価値をあげていき、より大きく社会的な問題を解決する。 そこのコストを減らすと、自由度が減ってしまうし成果が出ないことが多い。
これは、寄付で受け取ったお金を別のところへ与えることがNPOの役割じゃなくて、お金を使ってなにかのやり方をおしえるところにNPOの価値がある。 つまり、CharityじゃなくてPhilanthropyであるべきなので、単に問題を軽減するのではなく、問題を解決するのがNPOの役割であるといえる感じかな。 最終的に社会へ還元するのが役割なので、その過程で資金を集めたり増やしたりするのが妥当であるという話。
助成金とかは使い切らないといけないフロー型と、寄付とかで集めたお金はストック型。 集めたお金を増やすなど掛け算をするストック型を意識して行く必要があるという話。
感想
- 投資と本質的には同じであるという
Just Giving: Why Philanthropy Is Failing Democracy and How It Can Do Better Hardcover
アメリカの慈善活動/寄付の歴史や傾向から、慈善活動は何をもって正当化できるのか、どういう役割があるのかについての著者の考えを書いてる書籍。 著者のRob Reichは政治学者なので、少し他の書籍とは毛色が違う。 この書籍は難しくてちゃんとは理解できなかった。
- 慈善活動は平等に対することを多く扱うが、慈善活動の対象は平等ではないことがある
- アメリカではGDPの2~3%程度は寄付に使われている
- これは世界的にも突出している
- #GivingUSA2017: 2016 Giving Increased by 2.7% | Dini Spheris
- 実際のデータから見ると貧困層への寄付よりも宗教、教育が多い
- 1/3は宗教
- $1 million or moreになると教育、健康の比率が高くなる
- Patterns of Household Charitable Giving by Income Group, 2005
- アメリカの税制の解説
- アメリカの寄付による控除は最高税率の人が最大の控除で、最低税率の人が最低の控除となっている
- これはupside-down effectとして知られている
- アメリカの寄付は税制上の優遇処置と紐付いているという要素はある
- 慈善活動の目的はただの再分配ではないとした場合に、どういった部分に意味があるのかという話。
- この本ではボランティアとPhilanthropyを区別しないとしているが
- 慈善活動には、国家や市場が引き受けない、世代間格差の発見 (Intergenerational justice)に意義があるのではという話
- これはかなり長期的なプロセスになり、そこを補助する話が色々とあった。
- 慈善活動の実勢において世代を超える活動が必要で、これは財団とかが当てはまる
- これらの財団に対しての補助金はどこまで正当化できるのか
- 将来における正義 presentism
- 世代間格差に対応するための慈善活動という話がある
- この格差に対応するのはそういった活動があっていて、それができるような形にするのがよさそうと
Pragmatic Philanthropy - Asian Charity Explained | Ruth A. Shapiro | Palgrave Macmillan
中国、インド、日本とかアジア圏における寄付や慈善活動についてのケースステディをまとめたもの。 CC BY 4.0で公開されていて、PDFとepubが無料でダウンロードできる。
- Pragmatic Philanthropy | SpringerLinkからダウンロードできる
- Our Research | Centre for Asian Philanthropy and Societyからデータを探せる。
📝 気になったところのメモ書き
- SDO = Social Delivery Organizations
- NGOと大体いっていることは同じ
- ただNGOは非政府組織なので、SDOは政府と関係している組織も含んでいるという意味合いでSDOという言葉を使ってる
- 広くみれば、NPOもSDO
- アジアにおける慈善活動
- 国ごとの慈善活動の歴史や特徴
- 植民地時代の影響、政治的な影響などが慈善活動にもあわらている
- アジアではCivil societyにおける市民の役割が曖昧
- 民主主義においては複数の視点からの意見などは称賛されることで、市民はそういう役割を持っている
- 慈善投資の効果的な場所の一つは、政府が引き受けない分野
- これはJust Givingでも同じ話があった
- アジアには信頼の欠如(Trust Deficit)があって、慈善活動が発展していない
- これは最近改善されつつある
- なぜTrust Deficitが存在しているか
- 国に依存、SDOに透明性がない、スキャンダル、NGOの目標設定の曖昧さ、慈善団体に入ることが人気ではないキャリアパスが主な原因と考えられる
- 国の慈善活動の管理と税制の影響
- 経済的な面では、税制上のインセンティブで慈善活動を推奨している
- 政治的な面では、個人や企業の慈善活動を推奨している
- SDOにおける透明性と開示が欠如しているため
- アジアにおけるSDOは財務の透明性レポートが不要な場合が多い
- 韓国とフィリピンではさままな報告書が必要となっている
- またドナーはそのお金がちゃんと使われたのかを確認したい = 透明性
- スキャンダルによる影響
- 中国では郭美美の事件後に慈善寄付は90%減少した可能性がある
- NGOの目標の問題
- NGOの役割が曖昧であり、特定の種類の慈善団体に人気が集りやすい
- アメリカの501(c)では、税法はNGOの目標と方法論によって分類している
- 人気のあるキャリアパスに慈善部門が入ってなかった
- Asian wayに代表されるアジアの特徴を持った慈善活動
- アジアでは、政府とSDO(social delivery organizations)が同じ方向を向くケースが多い
- 政府もそれらの分野のSDOには資金を提供している。これは一種の社会契約。
- たとえば、日本ではNGOが高齢者に不可欠な社会サービスを提供する代替手段としてみなしている部分がある
- 社会福祉とNGOの方向がかぶっているのが特徴に見える
- 一方でアジアでは、家族支援からの傾向で長期支援の取り組みが多い
- 国ごとに歴史とその特徴について書かれていて面白い
- インドの例
- インドではカースト制度に組み込まれている部分がある
- インドではコミュニティにおける支援の文化が根強くあり、24%が隣人にお金をあげたことがあり、53%が親類から返済されないお金は寄付であったと回答している
- また、インドでは1860年(イギリス領時代)には非営利団体の存在が法的に定義されていた
- インドの例
- 日本
- 公益法人はNGO(“non-governmental”)に反して、政府が認定する仕組みになっていた
- 天下りの問題があり、NGOに対して政府が干渉が発生していた。Trust Deficitの要因
- 最近になってグロバリデーションなどの影響もあり、Civil societyの発展が起きている
- 1995と2011の地震によって慈善活動の流れは一気に変化した
- 政府も地震のボランティアの全体の調整ができなかったという反省があり変化している
- また1998年にNPO法が成立し、慈善活動について研究する人が増えた
- NGOが社会サービスを提供する機会が増えている
- 1980年以前までは、非営利団体は予算的な静的な資金調達モデルに依存していた
- 1981年にBill Draytonが起業家の概念を導入して、社会問題に取り組む考えをだした
- これは次のような概念を導入した
- 今まで組織ばかりにフォーカスしていたのを、リーダーシップや才能にも視点をあてた
- 非営利団体においても、健全な管理、透明性のある会計、戦略など基本的なビジネスの信条に従うべき
- このアイデアによって、今まで”神聖なものとして扱われていた利益”や”非営利”の境界を曖昧にするものだった
- これは、NGOにおいてもKPIの適用や非営利管理をするといった革新をもたらした。
- Social enterprisesという用語はこのモデルを示している
- Social enterprise - Wikipedia
- この本では、NGO(non-governmental organizations)じゃなくてSOD(non-governmental organizations)といっているのは、この概念を持ってるからかな。
- 寄付研究でよくでてる、今まで寄付金的なお金を神聖なものとして扱っていることが多かったけど、それが変化し始めた開始点が1981年
- これ以前の非営利団体は、まだ革新的であるか証明されていない仕事に取り組んでいたため、補助金などでやりくりしてた
- でも補助金は静的な資金調達モデルで、制限があった。なので社会起業家モデルを取り入れたという話
- インパクト投資とかもこの辺に関係してくる(ロックフェラーが起点)
- 社会的企業のハイブリッドケース
- ハイブリットケースは、収益、非営利団体、ミッションが相互に関係している
- 台湾のEden Social Welfare Foundation、フィリピンのCARD、インドのBAIFの例
- 社会的企業が問題の根本を解決しているかという議論はまだ難しい
- 実際にはまだ問題は解決できてなくて抑制/軽減しているケースが見られる
- なので、これを解決するうには、もっと企業、政府、市民活動をもっとうまくつなげる方法を考える必要がある
- SDOは政府や企業がまだ革新か分からない部分に取り組んでいる先端っぽさがでていた
- アジアにおいて、ロビーイングがほとんど存在しない
- K Street (Washington, D.C.)にいるようなロビイングの団体はほぼいない
- アジアでの慈善活動は遅れてはいるけど、始まったのが最近であるため、いろんな過去のステップを飛ばしてる
- アジアではイノベーションによって、欧米の過去の慈善活動の話をスキップしている
- アメリカとかで慈善活動始まった段階ではまだ携帯とかなかったけど、アジアで広まっていく段階にはインターネットとかあるし、いろんなステップを飛ばしてる感じ
- 人間関係とテクノロジーを一緒に利用できる
- アフリカのインターネット的な感じ
関連
- 「Doing Good Index 2020」報告書の抄訳を公表しました | 日本NPOセンター
- 書籍書いたCAPSの人のレポート
- Open access at Palgrave Macmillan
- palgraveという出版社はOpen Accessという形で無料でアクセスできる書籍を色々公開していて質が高い
- 書籍をチャプター単位で購入できるのも合理的
経済的な豊かさと寄付の心理的効用の関連
寄付の心理的な作用についての研究。
近年の研究は,寄付には寄付者の幸福感を高めるという心理的効用があり,その効用はその後の寄付行為を動機づけて寄付を個人内で連鎖させることを示唆している.寄付は資源の再分配の1つの形であることを考慮すると,貧しい人々より豊かな人々において寄付が積極的になされることが期待される.そのため,この心理的効用も,豊かな人々においてより強く得られることが期待される
自律的な寄付でないと幸福感は高まりにくい。 しかし、日本では元々は自律的な寄付が少なかった。 東日本大震災の前後でそれが変化し自発的寄付が増えたことや、寄付の有用性についての報道が増えたことで、 寄付の心理的効用が得られやすくなったと考えられるという話。
この仮説をアンケートのデータから分析している話。 この研究には因果関係がアンケートで取れてない変数の影響を受けている可能性がある。
この研究の問題点としては、以下の3点があげらている。
- 変数が足りない可能性
- 測定方法
- 東日本大震災の前後のデータが同じ方法で取られていないこと
コミュニティ・オーガナイジング――ほしい未来をみんなで創る5つのステップ | 鎌田華乃子 | NGO・NPO | Kindleストア | Amazon
社会運動の話でもあり、チームビルディングの話でもあり、小学生が難しい話をするミステリー小説みたいでもあった CO(コミュニティ・オーガナイジング)とはどういうものかを小学生の話で紹介しているので、めっちゃ複雑なこという小学生だなと思って読んでた。
CO(コミュニティ・オーガナイジング)は次のステップを踏む。
- パブリックナラティブ
- 関係構築(1on1)
- チーム構築
- 戦略
- アクション
という話
📝 気になったところのメモ書き
- キャンプオバマ
- オバマの大統領選のときにCO自体が注目を集めた
- オバマを大統領にした「パブリック・ナラティブ」|マーシャル・ガンツ/cakes編集部|cakes(ケイクス)
- 社会運動においては人は資源であるたので増えるほどいい
- 📝 この考え方が結構面白い
- 一方で価値観を共有し、関心事から互いにできることを見つけて資源とする
- ストレッチゴールを設定することが重要
- 最初から無理なことを目標にしても人は集まらない
- 現実的なゴールを繰り返し達成し小さな変化を起こしてそれを大きくしていく
- みんなの価値を持って、戦略的ゴールを決定してそれに向けて進める
- 困難→選択→結果のストーリーで作る
- 価値観の共有から関心と資源の交換
- 大事な思い = 価値観
- 共通の関心事
- 互いにできること = 資源 = 人
- ルールだと押し付けっぽいので、ノーム(みんなの合意事項)と呼ぶ
- 仕事をふるのと役割をふるの違い
- 役割は決して得意なことだけじゃない
- COでは人はコストじゃなくて資源という扱い
- そのため、ドットリーダーシップじゃなくて、スノーフレークリーダーシップで単一障害点を避ける話
- 社会的にパワーがない人のところに社会問題が集まる
- これは寄付やNPOの問題でもみたところ
- それを見つけるのはやっぱりNPOのRole
- ビリーブキャンペーン
- どのように刑法を改正する活動をしたかについて
- ロビイングと市民活動
- インサイダー戦略とアウトサイダー戦略(アート的な話)
市民活動について
民主主義では、現実的な面で議員という代表を置いているという話が面白かった。 これは市民が政治に参加しないという意味ではないという話。
イギリスの哲学者ジョン・スチューアート・ミルは、政治の意思決定には全員参加が原則だけど、大きなコミュニティでは現実的に難しいため、代表を選んで政治を行うのがよいと提唱しています。そしてぐっと遡って古代ギリシャの哲学者アリストテレス。民主主義発祥の地の人なので民主主義が大好きなのかと思ったら、違うようで驚きました。彼は民主主義が万能だと思っていません。ただ民主主義は社会に「公平さ」と意思決定に「多様性」をもたらすのに重要であるとしています。そして民主主義を補完するため、One(一人の意思決定者)、Few(数名の意思決定者)、Many(たくさん、全員)の三つを組み合わせた政治形態を理想としています。これは日本の政治で言うとOne=内閣総理大臣、Few=国会、Many=市民となるでしょう。民主主義とは選挙で代表者を選ぶことではなく、私たち一人ひとりが全員参加して政治の意思決定をすることを意味している。これは私にとって大きな気付きでした。また、自分が追い求めたいことを肯定してもらえたように感じました。
鎌田華乃子. コミュニティ・オーガナイジングほしい未来をみんなで創る5つのステップ (Japanese Edition) (Kindle の位置No.382-391). Kindle 版.
たとえば、議員がすべて要求を満たすフレームワークのコードを書くのは現実的には難しい。 なので、そのフレームワークをつかう市民はバグを見つけたり、使いづらいところを見つけたらバグレポートをした方が建設的。
Twitterとかブログで書くだけでは、フレームワークを書いてる人には伝わらないので、書いている人へレポートするといった直接的な感じにしないと伝わらない。 社会運動もこういう議員へのアプローチが含まれている活動と考えると真っ当な感じな気がする。
使いづらいとかはある種の感情から始まることが多いけど、バグレポートするときには建設的な形でまとめる必要がでてくる。 また、実際に治せるような単位でのIssueを切るのが直す側にとっても扱いやすい。(ストレッチゴール) 今は、報告先がわかりにくかったり、ISSUE_TEMPLATEがなかったりするので、この辺がうまくいっていないのかなと思った。
感情でのアプローチが先行してしまうと、それへの恐怖が出てしまう。
Charity and Philanthropy For Dummies
主に寄付する人向けの書籍で、色々なカテゴリの慈善団体の活動について紹介している感じ。 とにかくカテゴリがかなり幅広く書かれていて、色々な種類の慈善活動を網羅的に紹介してる本。 実際に寄付をしたくて、その候補を探す人が読むと良さそう。
ベンチャー慈善活動の事業モデルについて触れている。 会社のCSR的な方向やインパクト投資についても書かれている。
Givingすることによる自身への作用について書かれてるのが結構特徴的。
- Giving Makes You Feel Good
- Empowering Yourself to Make Change
慈善活動は健康に良いって話が面白い。
Getting through Giving: What You Receive in Return Give and you shall receive; that’s the maxim for this book. If you find this idea off-putting (believing that the whole point is to share what you have with others without asking anything in return), think again. As we discuss in this section, when you engage increasingly in philanthropy you discover that you receive a bounty of benefits in return. Benefitting emotionally Giving feels good and is good for your health. In fact, the more you give, the stronger you make that part of your brain that’s associated with compassion (if you need persuading, check out the nearby sidebar ‘Brainy research on compassion’). In a way, you’re working out a muscle: the more you exercise it, the stronger and healthier it gets.
→ これあとで調べてるけど、実際に慈善活動と幸福感には相関があるという研究結果が存在してる。
Why Philanthropy Matters | Princeton University Press
アメリカは相続税の重みがあるので、実業家が慈善家へと転換していくという話は面白かった。 「慈善団体は政府や企業が取り組めないことを見つけることに役割がある」とか「お金を稼ぐより慈善活動の方が難しい」とか「慈善団体にスキルのある人が必要」という話と組み合わせると、 この転換は色々解決できる強制力になっていそう。
ヨーロッパでの慈善活動にそこまで活発ではないのは、 ヨーロッパはアメリカに比べて、社会福祉システムが強いという印象があるからではという仮説。 一方で、実際の社会福祉システムは利用できない人が利用できるようにするであることが多く、 利用できる人にさらに研究の促進といった変革をもたせるような積極的な育成することは少ない。 慈善という私的努力ではなく、公的な福祉であるべきという話がある。 この傾向はドイツや日本などにある。
基本的にはアメリカにおける起業家精神と慈善活動については繋がりがある。(Bill Draytonの話など) この起業家精神と慈善活動のサイクルについての話。 このサイクルのキーの一つとして相続税を置いている感じ。
アメリカでは相続税が重たいため、それを回避する手段として慈善活動はある。 これによって実業家から慈善家への転換がある。
主には富裕層における慈善活動の話でもあった気がする。 個人は自由に富を蓄積できるが、その富は継承ではなく社会に還元するのがよいというのがアメリカのベースにある感じ。 社会に還元するというのは、同じような新しい機会を社会に提供する = 起業家精神の継続にあると。
社会福祉はベースであって、グローバルの問題を解決するのにはあまり適していないとも取れる感じ。
アメリカとヨーロッパの比較があった。 アメリカでは、どちらかという起業家精神でグローバルな問題を解くことが慈善活動であると ヨーロッパだと、国やっていることを引き継ぐの慈善活動であると捉えている。
最後の方はビル・ゲイツとウォーレンバフェットが始めたThe Giving Pledgeの話など。 富裕層における寄付の事例とか。
書籍全体的に、富裕層における慈善活動がメインではあったかも。なぜそういう構造になっているのかについてを見てる感じ。
非営利団体の資金調達ハンドブック
実践的なNPOにおける資金調達、寄付の募集の仕方、実際のプラクティスなどが書かれていた書籍だった。
寄付までのワークフロー
- 共感: まずは注目を集める
- 納得: それに対して私達はこういう活動をしています
- 信頼: 寄付金はちゃんとこういうことに使っていますよという証明をして信頼を得る
用途と金額目標と募集期間はセットで考える。
寄付する側もいつまで募集しているのかという期間が決まっていないと、曖昧になって寄付できない。(後でいいかとなる)
「営利」と「非営利」の違いについてが他の話でもでてきたけど書かれてた。
NPOの社会の課題を解決するのが目的。 そのため、活動のために利益を上げることは正当で、活動で得た利益を給料として支払うこともできる。 ただし、その利益を社会の課題解決にいかすことで、最終的に社会に還元するのが目的となっている。
営利組織は、利益を最大化するのが目的。そこを間違えない。 NPOがミッションと整合性がある分野で収益を得るのは望ましいが、整合性があってない場合には注意する必要がある。
非営利団体の特徴を生かした収益のあげ方として、「共感」による購入と「参加」に収益を上げる方法について。 エコなどのメッセージをだしてそれに「共感」した人が購入するというメッセージ性があるもので収益を上げるという手法。 これ読んでいて、ナイキの広告の話を思い出した。
「参加」の方はボランティアに参加しもらった人を経由して販路を広げたり、人件費的な問題、商品開発するといった話。
The Science of Giving: Experimental Approaches to the Study of Charity
寄付に対する仮説と検証をしている学術的な書籍。 内容とは関係ないけどウェルビーイングの設計論もこういうスタイルの書籍だった気がする。
論文をベースに話をしているので、いろんな論文の話がでてくる。 仮説→検証→結論みたいなパターンも一定になってる。
面白かった章のメモ書き。
“Charity and Philanthropy For Dummies”で出てきた寄付は健康にいい話が結構真面目に研究として出てきてよかった。 プレミコミットメントの手法は、実践的で役に立つ気がするのでアプリを書いてみる。
1章: 寄付することは幸せになり、幸せな人は寄付をするという正のフィードバックループがあるかどうかについて
- 与えること(寄付)は幸福の相互作用があることを検証する研究
- 寄付をするで寄付した人が幸福を得られることにはある程度の相関がある
- Neural Responses to Taxation and Voluntary Giving Reveal Motives for Charitable Donations | Science
- Is Volunteering Rewarding in Itself? - MEIER - 2008 - Economica - Wiley Online Library
- Social Relationships and Health: A Flashpoint for Health Policy
- Spending Money on Others Promotes Happiness | Science
- 幸せな人はより多く与え、与えることは幸せになるという正のフィードバックループがある
- 一方で、このインセンティブを広告した場合には、社会的な利益ではなく経済的な利益に視点が移動してしまい、長期的な継続が減るリスクを持っている
- crowding out の現象は慈善事業では起きやすい
- 慈善活動の文脈のcrowding outはもう少し限定的な意味になっている?(この本だとなんか経済的な利益に移動するぐらいの意味っぽく見えた)
「政府からの助成金が非営利組織に与えられたとき、その団体への寄付金が減る」という現象
- 寄付に関する既存研究の紹介
- 寄付研究ブログー「寄付」を科学してみませんか?: ファンドレイザーは「収益の最大化」を目指さない
- 【エッセイ】幸福を善意の行動につなげる - Ylab 東京大学 山内研究室
3章: 寄付の苦痛を軽減するプレコミットメントの手法
- 寄付が難しいという感覚は、稼いだお金を手放さないといけないとう苦痛から来ている
- これは、長期的な満足よりも短期的な快楽を好む傾向を示している(ダイエットしなきゃというときに、ケーキを食べてしまう)
- この長期的な目標を満たすために、事前に決めておくプレコミットメントが有効
- ある程度の枠を最初に決めておけば、寄付する際に苦痛が軽減される
- これ結構実用的なので、GitHubとかSpreadSheetでプレコミットメントを管理するアプリケーションを書いてみようかなと思った
- brooklynjs.github.io/budget.jsみたいにGitHubでbudgetを管理してるの思い出した
- 寄付する側にも透明性があると面白いのかも知れない
9 ~ 11章: 感情と寄付について
- 同情は物理的な距離やその人が識別可能になったときに起きやすいが、特定可能な被害者と統計的なデータを同時に提供すると寄付に対して逆影響する可能性があるという論文
- 一方で慈善団体はこういった被害の論調より、前向きの概念を使っていることが多い
- 特定可能な被害者をフロントに立たせることは寄付に対する効果があるが、類似性を伝える方法は他にもあるだろうという結論
- ロビイング会社についての映画である女神の見えざる手でもこの手法を使ってたなーとか思った
- 10章: 特定可能な被害者の場合は感情が反応するが、それがあまりにも大規模になってきた場合に感情が反応しなくなる
- 1,2,3人と人が増えると感情も反応するが、あまりにも数が大きくなったときに反応しなくなる
- これをPsychic Numbing(精神的麻痺)と呼んでいた Slovic (2007)
- 感情と介入
- 感情など人の慈善活動には介入できるものがある
- 寄付決定のタイミングを変更する外部的介入
- 人道的苦痛などを学ぶ会をしたあとに寄付を募集すると、寄付が増える傾向がある
- このようなタイミングを変更(介入)する方法
- 人々に自分の意思決定プロセスを変更するように促す内部的介入
- マインドフルネスが例としてでてた
- このような介入の影響を減らすには、クリーングオフ期間を設けるといいという話があった
- 感情を揺さぶるような出来事は時間が経過すると、その影響は軽減されるため
- 寄付に対してこのような介入を取り除きたいという場合
おわりに
寄付研究や慈善活動、NPO、社会活動についてのいろんなものを読んだ。
個人的にはPragmatic Philanthropy - Asian Charity Explained | Ruth A. Shapiro | Palgrave Macmillanがよくて、色々な国の背景とか書かれて面白かった。 日本含めアジアはアメリカに比べると慈善活動の研究が進んでいないので、色々英語圏の本を読んだりする必要があった。 一方で、アメリカとかとは違って慈善活動が発展する段階ですでにインターネットがあるので、色々なステップをスキップしていくだろうという話が面白い。
色々読んでいて、今までの慈善活動はどちらかというとCharityの見方だったけど、Philanthropyの見方を知れてよかった。
- 記事や論文
- 動画
- ResearchFund3.0 - 研究費のイマを言語化し、ミライを予想する - Key Session - YouTube
- Giving 2.0: The MOOC | Coursera (寄付する側はどういうスタンスでやるべきかという講座)
- 本
- Just Giving: Why Philanthropy Is Failing Democracy and How It Can Do Better Hardcover
- Pragmatic Philanthropy - Asian Charity Explained | Ruth A. Shapiro | Palgrave Macmillan
- The Science of Giving: Experimental Approaches to the Study of Charity
- コミュニティ・オーガナイジング――ほしい未来をみんなで創る5つのステップ | 鎌田華乃子 | NGO・NPO | Kindleストア | Amazon
- Why Philanthropy Matters | Princeton University Press
- 非営利団体の資金調達ハンドブック
- The Science of Giving: Experimental Approaches to the Study of Charity
Social entrepreneurs are not content just to give a fish or teach how to fish. They will not rest until they have revolutionized the fishing industry. – https://en.wikipedia.org/wiki/Bill_Drayton
このフレーズが面白そうで、社会起業家、社会的企業についてもう少し調べたいので、何か良い本とかないかな?
参考
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